睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まる無呼吸になったり、もしくは浅い・弱いなどの低呼吸になったりする病気です。
日本における潜在患者は約300万人ともいわれています。
特に最新の研究では、「日本人の成人男性の15~23%」とも言われており、いびきをかいている方は一度は検査が必要です。
女性も閉経後の方はおよそ9%罹患されているといわれています。女性は男性とは対照的に「顎が小さく痩せていて、喉の広げる筋肉が弱い方」も多く呼吸が止まっている方がいらっしゃいます。
10秒以上無呼吸や低呼吸が続く状態が1時間に5回以上認められ、日中の眠気や中途覚醒、倦怠感などの症状がある場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
睡眠時無呼吸症候群のリスク
この病気の怖いところは、睡眠中に体へさまざまな負担がかかることです。その最たるものが、心臓への負担です。
SASを放置すると、心臓に大きな負担を与え、冠動脈疾患や心筋梗塞、脳梗塞などの発症につながり、突然死のリスクも高まります。
一見、怖い病気ですが、SASは治療方法が確立しています。放置をすることで前述のような突然死や眠気による事故などを引き起こし、自身のみならず他者の命も脅かす結果を生みかねません。
したがって、早期発見・早期治療が重要になります。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状
- いびきをかく
- 睡眠中に呼吸が止まる、息苦しさを感じる
- 夜中に目が覚める、寝付きが悪い
- 何度もトイレに起きる
- 寝汗をかく・寝相が悪い
- 熟睡感がない
- 倦怠感・頭痛
- 日中の強い眠気
- 集中力・記憶力の低下
- 抑うつ状態(やる気が出ない、イライラなど)
- 性的欲求の低下
- ED(勃起機能不全)
睡眠時無呼吸症候群の疑われる人の特徴
- 肥満
- 小さいあご、小顔
- 太い(短い)首
- 男性・閉経後の女性
- 加齢
- 家族歴(遺伝)
- 鼻づまりなどの鼻症状
- アルコール・睡眠薬
- たばこ
- アデノイドや扁桃肥大
- 口呼吸
- 舌が後方に落ち込む
- 慢性的なのどの違和感
睡眠時無呼吸は、成人男性に発生しやすいと思われがちですが、女性や子どもも発生します。女性の場合は閉経後の女性ホルモン分泌低下が、子どもの場合はアデノイドや扁桃肥大などがSASの原因になることがあります。
また、加齢により筋力が低下することで気道が閉塞しやすくなることも、SASの原因のひとつとして挙げられます。
睡眠時無呼吸症候群と鼻疾患の関係性
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)や鼻ポリープ、鼻中隔弯曲症、アレルギー性鼻炎などの症状で鼻づまりがあり、口呼吸の場合も、いびきや無呼吸を起こしやすく、SASの可能性が高くなります。
睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は、睡眠時の呼吸状態を計測する「簡易無呼吸検査」や「ポリソムノグラフィー(PSG検査)」などを行います。これらの検査は、夜間寝ている間に行うもので、身体にセンサーを装着しますが、痛みを伴うことはありません。
また、当院では「ご自宅で」簡易検査、精密検査を行うことができる体制を整えております。入院の必要がない上、検査費も入院の場合と比較して抑えることが可能です。
≪簡易検査≫
2700円程度
≪精密検査料金≫
入院:4-6万円程度
自宅:1万円程度
*3割負担、検査料金のみの参考です。初診料・再診料・処置料が加わります。
検査を終えたら、後日、医師から検査結果の説明を受けます。SASの治療は病状・状況により方法が異なります。
詳しくは主治医の先生にご相談ください。
検査の流れ
①初診時に内視鏡で閉塞部位を検査します
鼻より内視鏡検査を行い、閉塞部位を確認します。
*内視鏡検査は小児でも行うことが出来る、痛みの少ないすぐ行うことが可能な検査です。
閉塞部位が喉である場合、睡眠中どの程度いびきをかいているかが分かる検査(通称:簡易検査)を行います。
内視鏡検査:1800円 *3割負担者料金
②自宅で一晩検査キットを装着していただきます
簡易検査キッドは1~3週間で到着いたします。簡易検査:2700円
違和感で寝付けない方がいらっしゃいますが、検査状は寝ているときのみ判定いたしますのでご安心ください。
測定できていない場合は、無償で再検査となります。
③翌日送り返していただきます
高額機械を業者よりレンタル致しますので、すぐに送り返してください。
郵送方法は自宅引き取り・コンビニ持ち込みどちらでも可能です。
≪注意≫
返送が数カ月遅延する場合は業者より連絡があります。連絡を無視する場合は機器損害と見なされ損害賠償を受けることがあります。必ず返却はお願いします。
④送り返した10日後以降に当院へお越しください
検査結果が医院へ到着しており、鼻・喉の形状、検査結果より適切な治療をご案内いたします。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法
SASの治療法には、CPAP(シーパップ)療法、口腔内装置(マウスピース)による治療、外科的手術による治療、生活習慣の改善などがあります。
≪軽症 呼吸停止回数5~15回/時間≫
軽度であれば「マウスピース」を歯科医院で作成し、気道を確保します。
こちらは下顎を前に出す特殊なマウスピースです。無呼吸検査+紹介状で作成が健康保険適応となります。
≪中等度 呼吸停止回数15~30回/時間≫
中等度であればマウスピース作成/CPAP治療が推奨されます。
中等度であっても呼吸停止回数が20回を超えた場合は、体に酸素が行かない状態が強いのでCPAP治療が勧められます。
なお、簡易検査で呼吸イベント回数が20~40回/時間 の場合は脳波測定が追加される精密検査を行う必要があります。
≪重症 呼吸停止回数30~回/時間≫
重症であれば早急に「CPAP療法」を行う必要があります。
簡易検査であれば呼吸停止回数40~回/時間が認められた場合すぐに治療が必要と判断されます。
「CPAP療法」は、装置からホース・鼻マスクを介し、空気を気道に送り、常に圧力をかけて気道が塞がらないようにする治療方法です。圧力は、病状・状態に応じ医師が処方します。
CPAP療法を適切に行うことで、睡眠中の無呼吸やいびきが減少し、熟睡感が得られるようになります。また治療を続けることにより、眠気の改善、夜間のトイレの回数が減るといった、SASの症状の改善が期待されます。
さらに、高血圧・動脈硬化などの生活習慣病の改善や「脳梗塞・出血」「心筋梗塞」心血管疾患のリスクが激減します。
CPAP治療は「対症療法」のため、継続的に治療することが必要となります。
手術療法は、効果がある方は一部に限られていますので、喉の所見・検査より判断いたします。
鼻閉が強ければ鼻中隔湾曲症の手術、扁桃肥大による無呼吸であれば扁桃切除+軟口蓋形成術という手術を行います。
これらは国に認められた保険適応の治療法です。
≪注意≫
最近さも無呼吸を治すように記載されている悪質な機械が売られています。
鼻に空気を通しいびき・無呼吸を治すなど記載されている場合は詐欺に近い商品ですので購入をせず、厚生労働省に報告をしてください。
絶対に治ることはありません。
よくある質問
Q1,無呼吸症候群は治りますか?
A1,治らない方が多いです。しかしCPAP治療をする限り、他疾患罹患リスクは通常の方と一緒です。
殆どの方の原因は骨格によるものですが、無呼吸の重症化原因によっては治る方もいます。
例えば肥満ですが、BMI30以上の方は20%の体重減でCPAPを付けるほどではない程度まで無呼吸が改善する方もいます。
またアレルギー性鼻炎などの鼻閉が原因でなる方もいますので、当院では無駄にCPAP治療をしないように鼻閉を直してからの検査を推奨しています。
他にも扁桃線の肥大による無呼吸の場合は根治が望めますので、検査と同時に提携病院へも紹介しております。
しかしその他の大勢の方は「CPAP治療をしていても治ることはありません」
Q2,レーザーでの自費の治療はどうでしょうか?
A2,合併症が多いので、私は推奨しません。
軟口蓋をレーザー照射することで委縮させ、気道を広げるという治療法ですが、論文によると合併症確率が40~60%近く認められます。
勿論効果がある方もいらっしゃるかとは思いますが、高額ですしなにより手技が確立されよりエビデンスが確保され保険適応になってから行った方がよいと私は思います。
自費診療はあくまでも自己責任ですし、そして自費診療での合併症は健康保険での治療はできません。リスクが大きいと思います。